人生100年時代の主役となるのは、旧来型の老人とは違う「シン・老人」たち。もっともっと自由気ままに、好きなことをして暮らしてほしい──。こう語るのは、高齢者専門の精神科医として30年にわたり、6000人以上を診察してきた和田秀樹氏(63歳)だ。新著『シン・老人力』でシニア世代向けに大胆な提言をする和田医師が、「シン・老人」という言葉に込めた思いを語る。
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いつまでも若々しくありたい。生涯、元気で人生を楽しみたい。みなさんが願っているのは、ただ長生きすることではなく、好きなものを食べ、楽しいことをして過ごす時間を長くすることでしょう。80歳や90歳になっても、年齢を感じさせない元気な人は近年、急速に増えました。
私は30年以上、高齢者専門の精神科医を本業として、6000人以上の高齢者に接してきましたが、近年は「人生100年時代」を明るく前向きに楽しみたいという、新たなうねりや“力”のようなものを感じるのです。現代の高齢者は、一般にイメージされるより、ずっとずっと元気で活動的です。
少なくとも60代、70代の大半は、身体機能も認知機能も若い世代と比べてもほとんど遜色ありません。個人差は大きいものの、ほかの世代に比べて、お金に余裕がある人も多いようです。現役時代、日本経済が今よりずっと強かったからでしょうが、約2000兆円に上る日本の個人金融資産のうち、7割を60歳以上がもっているとされています。
日本が経済力で世界を席巻していた時代を支えてきたわけですから、相応のお金を蓄えています。日本の高齢者はいろいろな意味で、むしろ“最強の世代”と呼べる存在ではないでしょうか。それなのに「高齢者はお金を使わない」と、不況の元凶のように言われます。
仮にお金を使わないとしても、それは買いたいモノや使いたいサービスがないことが最大の要因です。現役時代に、質の高い衣食住を享受してきた世代なのに、旧来の「高齢者」のイメージから抜け出せない、いかにも年寄りじみたモノやサービスばかりがあふれかえっているのですから、使いたくない気持ちも理解できます。
旅行であれグルメであれ住宅であれ、高齢者の琴線に触れるモノやサービスがどんどん充実してくると、しっかりお金を使う人たちが増えてくるはずです。私は、増え続ける高齢者のパワーこそが、閉塞状態にある日本経済を救う原動力になると考えています。