田代尚機のチャイナ・リサーチ

混乱つづくロシア経済は意外に堅調 制裁に加わっていない中国が大幅に貿易拡大

ロシアへの経済制裁の効果は小さい

 制裁に加わっていない非米同盟国、特に中国は、ロシアとの貿易取引を大きく拡大させている。2022年のロシアへの輸出(ドルベース、以下同様)は12.8%増、輸入は43.4%増、2023年については5月までの累計で輸出は75.6%増、輸入は20.4%増であった。5月累計の中国全体の輸出が0.3%増、輸入が6.7%減である点を考慮すれば、ロシアとの貿易の伸びは突出している。

 もう少し具体的に調べてみると、ロシア国内で不足が予想される自動車、自動車部品などのロシアへの輸出は5月累計で301.3%増加しており、また、販売先に困る鉱物燃料などについてはロシアからの輸入が21.3%増加している。ちなみに、2022年の鉱物燃料の輸入は59.5%増加している。

 貿易大国の中国が人民元建でロシアとの貿易を制限なく拡大する限り、ロシアへの金融、経済制裁の効果は小さい。加えてOPECプラスがロシア寄りの態度を示し続け、今後も減産により原油、エネルギー価格の下落を食い止めようとすれば、それもロシアへの大きな支援策となるだろう。

 ウクライナ侵攻後、日米欧は防衛費の増加ペースを加速させている。経済面では米国を中心に軍事産業は今後も業績を大きく伸ばすことになるだろうが、一方で、財政の悪化、公共投資の不足、民需品生産の圧迫、グローバルなサプライチェーンの非効率化など、その弊害も大きい。

 ウクライナ戦線が長期化することは、世界経済にとって大きなリスクではないだろうか。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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