若い頃の濃密な仕事上の関係性
今度、東京に行く際は、現在役員を務める私の師匠が開催するPR(広報)関連のセミナーに、講師として呼んでもらえることになりました。さらに、その翌週には、その師匠が過去の受講生を連れて唐津に来てくれます。今度は私がすべてのアテンドを担当します。
思えば会社員時代から、師匠にはさんざん振り回されてきましたが、その厳しい無茶ぶりに応えてきたから50歳になってもこうして仕事をいただけるのかな……と思うことしきりです。完全に「上司には従う」という「社畜プレイ」的ではありますが、なんだかんだいって若い頃に濃密な仕事上の関係性を築いた人々とは、20年以上経っても繋がるし、再び仕事もできるもの。その意味で、「円満退社をした」「常に良好な関係を築き、ケンカをしなかった」ということは大切だと思います。
こうして20年以上付き合う人と、付き合わない(というか、犬猿の仲・互いに嫌い合っている)人との違いはなにかといえば、“当時から仲が良かったかどうか”だけなんですよ。
結局、当時たいした理由でなくてもソリが合わなかった人とは今でも縁はない。たとえば暑い中、「お前、ネクタイしろ!」なんて言ってきた先輩に「暑くて無理です!」と返事したら、「うるせぇ! とにかくしろ!」なんて言われたことがあります。その先輩にも言い分があるのはわかりますが、やはりその後の付き合いはありません。
今でも会っている先輩は「そうだよな、まぁ、した方がいいのは分かるけど、暑いからな、よし、オレも今日は外すわ」と言ってくれました。「第一印象がすべてを決める」的な説がありますが、これは本当にその通り。「どうもこいつ、いけすかねぇな」と最初に思ったら、もうその後の人間関係は終了。ましてや20年以上続くワケがない。結局、人間関係が20年以上続くような関係になる先輩・上司ってものは「気が合う」だけなんです。能力よりも気が合うかどうかが自分の将来を決める、と思ってもいいでしょう。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『捨て去る技術 40代からのセミリタイア』(インターナショナル新書)。