そんな安慶名さんは2015年に「県認知症行方不明者家族の会」を立ち上げ、現在も当事者の捜索や家族のサポート活動に邁進している。
「認知症の人が行方不明になったニュースに触れると、全国どこでも心が痛みます。沖縄の言葉で相手の立場になる『ちむぐくる』、助け合いを表わす『ちゅいしーじー』を実践していきたい。高齢者は突然認知能力に問題が出ることがあり、いつ家に帰れなくなるかわからないのですから」(同前)
認知症の親が突然、行方不明になる──そんな出来事は誰の身に起きてもおかしくない。6月22日、警察庁は2022年の「認知症による行方不明者」が過去最高の1万8709人だったことを明らかにした。統計を取り始めて以来、10年連続で増加し、2012年からは約2倍に増えている。
こうした行方不明者は、その日のうちに見つかるケースがほとんどとされているが、介護アドバイザーの横井孝治氏はこう警鐘を鳴らす。
「発表された人数は届け出の数なので、実際に姿が見えなくなったことのある人はもっと多いはずです。高齢社会となった今、認知症患者の増加とともに徘徊による行方不明者も間違いなく増え続けるでしょう」
そして特に気をつけたいのが、安慶名さんの母のように、「まだ若い認知症患者」だ。介護評論家の高室成幸氏が言う。
「若年性認知症の患者さんは比較的体が動くうえ、服装もきちんとしている場合が多い。そうした人は街にとけ込みやすく、本人が道に迷うなどして帰れなくなってしまうと、そのまま行方がわからなくなるリスクが高いと言えます」
※週刊ポスト2023年7月14日号