役付きの待遇を断って現場の道へ
現役時代とは異なり、ストレスの少ない働き方を求めるシニアは少なくない。坂本さんが知る元公務員の男性は、下水道関係の仕事をしていた市役所を退職後、下水道関係のトラブルを現場で処理する会社に再就職した。市役所から役付きの待遇で再就職先も紹介されたが、断ってあえて現場の仕事を選んだ。
「役付きは給料が高い分、仕事量が多く責任も要求されます。市役所時代は翌日まで業務を持ち越したけれど、定年後は一日の仕事が終われば業務終了で、“この気楽さがいいんだ”と男性は喜んでいました。人生100年時代、気楽に長く働ける仕事を選ぶことも大事です」(坂本さん)
自身も69才で現役の医師である、いのくちファミリークリニック院長の遠藤英俊さんは60才を超えて働くことは医学的見地からもポジティブな要素が多いと語る。
「いまの60才は体も丈夫で元気な人が多い。60才以上はパートでも週3日の仕事でもいいから社会とつながっておけば、認知症やフレイルなどの健康リスクを下げられます。加えて、仕事を通じて“こういう人生を送りたい”という夢や目標が生まれれば、人生の中身が濃くなって有意義に生きることができます」
遠藤さん自身、国立長寿医療研究センターを定年退職後、67才で開業する道を選んだ。
「大学で教鞭を執ったり、どこかの病院で雇われ院長をするなどの選択肢もありましたが、目の前の患者さんを治したいとの思いがあり開業に踏み切りました。
まだ借金が2億円ほどありますが、患者さんを診るのは楽しく、病院勤めとは違う自由度があります。もちろん不安や面倒なこともありますが、それも含めてやりがいになっています」(遠藤さん)
写真提供/村関不三夫さん
※女性セブン2023年7月13日号