両親は女児の精神的苦痛に対する慰謝料をホテルに請求しましたが、その際、両親も子が瀕死の状態になり精神的に苦しめられたとして自分自身の慰謝料も請求しました。これは、被害者が死亡したとき、父母、配偶者及び子は慰謝料の支払いを請求できると民法に規定されていることによります。
裁判所は、女児について、3日入院したが通院はないことを基礎にして、重度のアナフィラキシーショックに見舞われたことから慰謝料を17万円としました。
しかし、両親への固有の慰謝料については、被害者が生命を害された場合と同等、またはそのような場合と比較しても著しく劣らない程度の精神上の苦痛を受けたときに限り認められますが、それほどのことではないとして否定しています。
交通事故で参考にされる慰謝料の基準は「入院1か月・通院ゼロで19万円」ですから、3日の入院だけで通院をせずに17万円はやや高額であり、ショックの深刻さを重視したものと思われます。
今回の件ですが、旅館への請求は、娘さんの病状の程度を考えて検討してください。ちなみに先の事例では、ホテル側はショック状態発現後、親が特効薬の使用をしなかったことで過失相殺を主張しましたが、裁判所は退けています。アレルギーは命にかかわることもあるので、親も慌てずに的確な対処が必要です。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2023年7月13日号