クルマの魅力を形作る上で「デザインと車名」が、重要な意味を持っていることを証明した、三菱デリカミニ。販売予定台数を大幅に超えるリクエストが集中するほどの大人気モデルとなっているが、その走りはどれほどの仕上がりになっているのか? 自動車ライターの佐藤篤司氏の連載「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」、今回はデリカミニで町中を駆け抜け、高速を走り、そしてワインディングを軽やかに楽しみながらキャンプステージを目指したルートを走ってみた。
SUVテイストに改良、愛玩的存在感も加えた
軽自動車の中でもっとも背が高く、居住スペースにおいてはもっとも広いといえるスーパーハイトワゴン。大人気のデリカミニのベースとなった車両は、そのスーパーハイトワゴンの代表格である三菱「eKクロススペース」でした。しかし、残念ながらイメージの湧きにくいネーミングと、軽自動車にしてはきらびやかすぎるエクステリアが影響してなのか、販売では苦戦していました。そこで三菱が考え出したのは、お得意としている「アウトドアテイスト」へと大きく改良することでした。
三菱には伝統的にアウトドア車を作る上手さがあり、その中から「デリカ」という人気のミニバンを半世紀あまりにわたって世に送り出して来ました。つまり歴史あるデリカはアウトドアの味わいを感じさせてくれるブランドとして認知されていて、現行モデルでも普通車の「デリカD:5(以下、D:5)」は大きな支持を得ています。当然、今回の「デリカミニ」は、そのD:5の弟的な存在ということでこのネーミングになっています。以前の「パジェロミニ」と同じような手法です。
一方でデザインは、D:5のようなキラキラ感のあるデザインではなく、イメージキャラクター「デリ丸。」の「犬っぽいデザイン」の味わいをフロントに与えて、愛玩的なポジションにあることを明確にしました。これによって軽自動車が陥りがちな「背伸びした感じ」がスッとなくなったのです。立派に見せようとすればするほど、軽自動車のサイズ感では表現することが難しくなり、同時に、その背伸びがいじましく見えてしまう。これがeKクロススペースの苦戦の要因だったと思います。その点デリカミニのデザインからは「軽自動車で徹底して遊ぼう、楽しもう」という主張がしっかりと感じられ、無理しているところがほとんどありません。
このツール感、お手軽感がアウトドアの自由な感覚とピタリと合致して、今回の人気になったのだと思います。こうしたツール感のある軽自動車で先行しているダイハツの「タントファンクロス」やスズキの「スペーシアギア」、そしてホンダの「N-VAN(商用車)」が人気を集めていることを見れば、当然と言えば当然なのですが、ようやくアウトドアブランドの老舗、三菱が軽自動車カテゴリーにおいても参戦できたことになったわけです。