株式市場が活況を呈するなか、かつて国民を熱狂させた“あの株”が再び脚光を浴びている。NTTは7月1日付で異例の株式「25分割」を実施した。これまで同社の株を購入するには最低でも40万円超が必要だったが、この分割によって現在は1万7000円程度で手に入る。
NTT株が上場したのは今から36年前の1987年2月9日。当時の日本はバブル経済の真っ只中で、企業収益や給料は大幅な上昇が続き、一般人が株式に投資する「財テク」が盛んだった。
そんな時代に売り出されたNTT株は“バブルの象徴”と呼ばれていた。株式評論家の植木靖男氏が振り返る。
「NTTの民営化後、株式公開されたNTT株の売り出し価格は1株約120万円でした。しかし財テクに奔走する一般投資家の買いが殺到し、付いた初値は160万円。それから2か月ほどで株価は300万円を超えましたが、バブル崩壊で価格が大幅に下落しました。まさにバブルの象徴と言える株でした」
今回の25分割により、NTT株の発行済み株式数は上場企業最多の約905億株になった。異例の大型分割はなぜ実施されたのか。植木氏が語る。
「昨年あたりから若者が証券口座を開いて小口株を買うという動きが活発化しています。そうしたなかで、株式分割をすることで価格を下げ、個人投資家にもっとNTT株を購入してもらうことが狙いなのでしょう。すでに任天堂やオリエンタルランドなど有名企業が株式分割を行なっています」
“憧れ”のNTT株が保有できるとなれば、ぜひ購入したいと考える人もいるかもしれないが、植木氏は「慎重に検討を」と語る。
「長期的に見ればどんどん株価は上昇していくと思われますが、現在は分割したばかりなのでしばらくは戻り売りが出てくるはず。慌てて高値掴みするのではなく、当面は様子を見て株価が落ち着いてから投資すれば、長期トレンドに乗って儲けが広がるでしょう」
NTT株の“バブル再び”となるか。
※週刊ポスト2023年7月21・28日号