政府は国内の労働者不足対策のひとつとして、熟練した技能を持つ外国人労働者の在留資格「特定技能2号」について、対象分野を拡大した。しかし経営コンサルタントの大前研一氏は「特定技能の発想は40年前のもので、時代遅れ」と断じる。では、労働力不足をどう解決すればよいのか。大前氏が提言する。
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政府は外国人労働者の永住につながる在留資格「特定技能2号」の対象を従来の2分野から11分野に拡大することを閣議決定した。
特定技能は「即戦力の一般労働者」の1号と「熟練した技能」を要する2号がある。1号は在留期間が最長5年で家族の帯同は基本的に認められず、2号は在留期間の更新に上限がなく家族を帯同できる。
これまで2号については、1号の12分野のうち建設分野と造船・舶用工業分野の溶接区分のみが対象となっていたが、ビルクリーニング、製造業、自動車整備などの9分野と造船・舶用工業分野のすべてを新たに2号の対象にした。1号の介護分野は現行の専門的・技術的分野の在留資格で長期就労できるため、今回の拡大には含めなかった。
だが、そもそも特定技能は、日本が日米貿易戦争に勝ちまくり、世界有数の豊かな国になってバブル景気に向かっていった40年前(1980年代前半)までの時代遅れの発想である。
リクルートワークス研究所の「未来予測2040」によると、労働供給量は2022年の約6587万人から2040年には約5767万人に減少し、1100万人余の労働力が不足する。このシミュレーション通りになれば、自衛隊、警察、消防、看護、介護、物流、建設などの分野では絶対的に人手が足りなくなって社会の安全・安心を維持できなくなるだろう。
“異次元”の移民政策を
いま、先進国はすべて労働力不足だ。欧米だけでなく、シンガポールやドバイなども自国に必要な資格を持っている国外の人材を高給で優遇し、懸命に労働力を確保している。
一方、30年以上も給料が上がっていない日本は、賃金や待遇でそれらの国に見劣りしている。IT技術者に至っては、1990年代後半からインド企業の年俸が日本企業を上回り、現在は8倍くらいになっている。