最近はベトナム人のIT技術者も、給与水準が不満で日本に来たがらないと報じられている。技能実習生はベトナム人が最も多いが、日本より好条件の国が増えた上、円安に伴う賃金の目減りもあって“日本離れ”が加速しているという。
つまり、今や日本は外国人労働者にとって全く魅力がない国になってしまったのである。賃金や待遇だけでなく、外国人に対する偏見が強いし、生活費も高い。なにより世界共通の“標準語”である英語が通じず、日本語は難しくて身につけるのに時間がかかる。これは極めて大きなハンデだ。
これまで日本は好景気になって人件費が高騰した時だけ、その場しのぎの“鎮痛解熱剤”として外国人労働者を短期的に入れ、喉元過ぎれば熱さを忘れて追い返してきた。そのツケが回ってきたのである。
今となっては、給料を現在の2倍にしても、目標とすべき年間65万人の10分の1も来ないだろう。それでも日本に来てくれた人たちには在留資格や在留期間に制限を設けずに永住させることが重要であり、そのための政策を速やかに実行すべきである。
こう言うと、必ず移民による治安悪化などを不安視する意見が澎湃(ほうはい)と出てくる。そういう問題は起きるかもしれないが、それは労働力を確保するための代償であり、きちんとした国民化教育をすれば、移民は必ずその国に貢献してくれる。
たとえば、トルコからガストアルバイター(出稼ぎ外国人労働者)として移民を大量に受け入れたドイツでは当初、居住地域のスラム化や治安悪化といった問題が起きたが、その第2世代以降は国民化教育を受けて優秀な人材を輩出している。国会議員もいるし、ファイザーの新型コロナウイルスワクチンを開発したビオンテックの創業者夫妻もトルコ系移民家庭の出身だ。
白豪主義の“元締め”のような国だったイギリスはスナク首相がインド系、イギリスからの独立を目指すスコットランド自治政府のユーサフ首相がパキスタン系で、今や移民国家の“先行指標”である。