タイで2022年発売の虫よけクリームを応用
しかし、そもそも洗剤やトイレタリー、化粧品などのメーカーである花王が、なぜ蚊を駆除する技術を開発しようとしたのか。まさか筆者の記事を読んで反応してくれたわけではあるまい。駆除対象がハエやゴキブリではなく、「蚊」なのも不思議である。
「弊社は、蚊が媒介する感染症の被害を削減することを目指し、これまでにない新しい発想で、蚊刺され予防の技術開発を進めています。その成果の第1弾が、2022年にタイで販売を開始した虫よけクリームで、肌に塗ることで蚊の脚をシリコーンオイルで濡らし、肌に降着できなくさせ、吸血を防ぐ製品です。
今回の技術はその応用で、蚊の羽や体を濡らすと、飛べなくなるのでは? というところから始まりました。そこで、水を弾く蚊の羽や体を濡らすのに有効なものが、界面活性剤を含む水溶液だったということです」
ハエやゴキブリが出るという状態は不衛生ではあるが、それによって直接的に人が死ぬということはほとんどない。人類をもっとも多く殺している生物は「蚊」であり、蚊が媒介する感染症による死者は世界で年間72万人以上とされている。ゴキブリごときでわーわー騒いでいる筆者などは、ワールドワイドな視点で見たら“贅沢病”と言えるのかもしれない。
なお、「弊社では既存の住居用洗剤、台所用洗剤などを使用して害虫駆除することは、目的外の使用となるため推奨しておりません」とのことで、筆者のように台所洗剤でゴキブリを退治するのは、あくまで自己責任でお願いするものである。(了)
取材・文/清水典之(フリーライター)