「双方向」のプログラムも
3年以上に及ぶコロナウイルスの猛威によって不要不急の外出が制限されたことで、とりわけ懸念されているのが高齢者の運動不足によってもたらされる健康被害だ。筑波大学による高齢の男女約240人を対象とした調査では、新型コロナの流行により高齢者の移動動作能力が通常の1年間の3倍以上低下する結果となった。
そうした影響が懸念されるなかで、施設入居者が少しでも外からの刺激を受け、体を動かす機会になればと、吉田氏はライブ配信を企画したのだという。この日は八代さんが40分間のプログラムに出演し、今年3月発表の新曲『想い出通り』や、『雨の慕情』『舟唄』など、誰もが知る大ヒットナンバーが披露された。吉田氏が続ける。
「八代さんご自身が、座ったままでできる振り付けを説明したり、やって見せたりするのが、視聴者の皆さんには“自分に語りかけてもらっているようだ”と好評です。テレビで歌う姿を見たり、実際のコンサート会場で遠くから見たりするのとは、違ったよさがあるのだと思います。ZOOMを通じて視聴者の方もコメントをつけられるので、配信は双方向です。視聴者の方と八代さんが直接お話しする機会を設けたプログラムもあります」
福岡県のアミューズメント施設の運営に携わっていた吉田氏は、2018年に独立し、スポーツイベントの生配信などを行なう現在の会社を立ち上げた。2019年に沖縄・石垣島のコミュニティラジオ局との共同で、八代さんのコンサートを誘致する仕事に携わった。吉田氏はこう振り返る。
「この時に、八代さんの歌の力に心を打たれたんです。翌2020年は八代さんのデビュー50周年でした。ところがご存の通り、コロナによってほとんどのイベントが中止になってしまいました。八代さんの50周年ツアーも白紙です。そこでオンラインでのライブ配信を企画したわけです」