手っ取り早く大金を稼げます──そんな甘言で人を集める「闇バイト」による強盗や特殊詐欺が多発している。だがそれは決して対岸の火事ではない。危ないのは私たちに家計の余裕や老後の蓄えをもたらしてくれるはずの「副業」も同じだ。令和5年版の消費者白書によれば、全国の消費生活センターに寄せられるSNSが絡む相談が増加中で、その中でも特に「副業」や「投資」などの儲け話に関するトラブルが目立つ。
実際に6月下旬には鳥取県の20代女性が「アプリの更新作業を手伝えば報酬がもらえる」と副業に勧誘され、「手続き料が必要」などと持ちかけられて計21万4600円を送金する詐欺被害が発覚。
夫の定年や老後の生活などを見据え、50才から副業を始める女性は少なくないがそこには落とし穴があると、副業アドバイザーの染谷昌利さんは語る。
「顧客のクレームに悩まされたり、発注元がブラック企業で心身が疲弊するなど実は副業にはトラブルが多いのです。特に最近はSNSを通じた募集の中に脱法行為につながるものもあるので要注意です」
子育てが一段落した後、ベビーシッターを始めた元保育士のHさん(51才女性)は「トンデモ依頼者」に驚いたと語る。
「ゴミ屋敷で子供が泣き叫んだときは、あまりに不憫で契約にない掃除をしました。シッター中に、若い男を連れ込んでイチャイチャする母親もいました」
訪問シッターに嫌気が差したHさんはその後、自宅で子供を預かるようになったが、それもまたいばらの道だった。
「時間を守らないどころか、直前に“今日は母にみてもらえることになったのでナシ”とキャンセルされることも。具合の悪そうな子供を預かったときは症状が悪化して私が病院に連れて行き、いつまで経っても迎えに来ない母親もいました。これではいつか事故が起きると思い、シッター稼業から完全に身を引きました」(Hさん)