そして3番目には入門用と言いますか、GRブランドらしいポテンシャルの高さや楽しさを、より手軽に味わえる仕様として用意されている「GRスポーツ」です。今回のテストカー、ヤリスクロスGRスポーツも、ここに入ります。見分け方としては「車名の後」にGRスポーツというモデル名が続きます。他にはアクアGRスポーツ、ランドクルーザーGRスポーツ、ハイラックスGRスポーツ、コペンGRスポーツなどがあります。
では、今回のヤリスクロスGRスポーツは「なんだ、入門用か」と甘く見てもいいのでしょうか? 早速、標準装備されているエアヌバック+合成皮革表皮に「GR」ロゴが付いた専用スポーティシートに体を納めて走り出しました。
スポーツカーは日常でも楽しい
ベース車両よりもレスポンスが向上し、クルマが「先に行こうとする感覚」をすぐに感じることができます。その感覚はごくごく低速の時から理解できる、スポーティなクルマには共通するものです。「もっともっと飛ばしたくなる」といった具合に、気持ちを急かすような感じとも違います。良くできたスポーツカーは、ゆったり走るときほど快適で楽しいものだと思いますが、このヤリスクロスGRスポーツにも、その心地よさがありました。日常的な速度域でのんびり走っているときにも「キビキビとした感覚」が十分にあり、ほどよい緊張感を伴って運転できて、退屈しないのです。
以前、よりスポーティな仕様の「GRヤリス」をドライブしたときに感じた「今すぐにでもサーキットに行きたい」という感覚とは少し違っていますが、それでも軽快さがもたらす心地よさは同種のもの。ショッピングに行くときにも、楽しいのです。この楽しさというか緊張感を感じながら運転に集中できる時間が少しでも延びることで、油断が減り、安全にもつながるのではないか、と思います。
スポーツカーというのは別に速さを競ったり、ただただ飛ばしたりするためにあるものではありません。日常的な安定した走りを知るためにも、GRスポーツというエントリーモデルはかなり魅力的な存在だと思います。ちなみに試乗した日は路面に水たまりがしっかりとできるほどの雨天。そこでも軽快さを感じながら、大きく姿勢を乱すことも、神経質な動きになることもなく、スポーティに走れたのです。
この絶妙な走り味を実現しているのは専用の「ファルケンFK510SUV」という高級スポーツタイヤです。さらにフロアトンネルとリアエンドの床下に車体強化パーツを追加して、数々の専用サスペンションチューンや電動パワーステアリング制御が施されています。ベース車のヤリスクロスも、軽快感のある走りが特長のコンパクトSUVですが、このチューニングによって、本来の魅力がより向上したわけです。なお、この足回りのチューニングで車高は10mmローダウン(低く)して、結果的に見た目のスポーティ感も増しています。
トヨタの人気SUVヤリスクロスに新設定された「GRスポーツ」はたくさんの手が入り、今回試したハイブリッド車が275万円(ベースとなったハイブリッドGは239万4000円)。これだけの充実装備が与えられていることを考慮すると、お買い得感は十分にあります。ちなみにGRスポーツのガソリン車は236万7000円です。