野良猫が、さまざま生活被害を与えることもある。そういった野良猫に餌をあげる行為は問題ではないのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
近所のAさんが野良猫に勝手に餌を与えています。これまでも野良猫に餌をあげないように近所の人たちと一緒に注意をしたのですがやめてくれません。そのせいで野良猫が増え、うちの庭にも頻繁に猫が出入りし、先日は花壇を荒らされました。野良猫が増えたのはAさんのせいだと思うので、Aさんに花の損害を請求することはできますか。山梨県・駒田弘恵(60才・パート)
【回答】
野良猫への餌やりが原因で糞尿による悪臭被害が深刻化して裁判になった事例が散見されます。ご質問のケースも、野良猫が増え、頻繁に出入りし始めているそうですから、今後の被害拡大が心配です。
損害賠償請求のためには餌やりが不法行為になる必要があります。猫の餌やりに関して、ある裁判例では、「猫好きの人の嗜好に基づく行動の自由はできる限り尊重されるべきだが、他方、猫による、特にその糞尿等による臭いを嫌う人も多いので、不快感を与えないようにする配慮も当然要請され、近くに猫嫌いの人がおり、猫の餌やりで付近に野良猫が集まり、その結果、野良猫の糞尿により猫嫌いの人が受忍限度を超えて大きな不快感を味わっていることがわかる場合には野良猫への給餌を中止しないと不法行為になる」という考え方を示した例があります。
野良猫の糞尿の悪臭がひどくて隣人がノイローゼになった事案でした。花壇荒らしが受忍限度内かどうかは程度問題であり、一概に言えませんが、丹精込めた花壇が荒らされれば心が痛みますし、種や肥料代等も損害になっています。
糞尿の悪臭被害まで待つ必要はないと思います。そこで、これまでの対応から期待薄かもしれませんが、Aさんに花壇を見せて現実の被害を認識させ、迷惑を受けている住民の存在を知らせて交渉すべきでしょう。