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吉村洋文・大阪府知事の「高校無償化」に反発続々 灘高校・前校長は「全校生徒にマイナスの影響が出る」

「無償化の理念そのものにはもちろん反対しませんが、仕組みそのものが納得できるものではないかたちになっています」と和田氏は語る

「無償化の理念そのものにはもちろん反対しませんが、仕組みそのものが納得できるものではないかたちになっています」と和田氏は語る

充実した「灘高校の図書館」が維持できるかの懸念

 和田氏は灘高校を例にとってこう説明する。

「授業料は年48万円、他に施設維持、冷暖房などの費用を別に約20万円集めており、計約68万円になる。単純計算すると、年間で新たに約1600万円が学校負担となります。昔と違いICT(情報通信技術)教育は必須であり、空調設備も欠かせません。そうした設備の更新時期を遅らせるなどのやり繰りすることで、生徒の教育環境への影響を懸念します。

 灘の場合、生徒が読みたい本をリクエストにより購入している図書館がとても充実しているのですが、そうしたものを削るとなると教育の質に影響しかねません。大阪から通う生徒だけを対象にした無償化によって、灘に通う全校生徒にマイナスの影響が出るというのは、保護者も納得しにくいのではないか」

 大阪の高校無償化が報道されてから、生徒の保護者から「引っ越したほうがいいのか」といった問い合わせが学校に寄せられることもあるという。

「不確かなことも多く、学校としては答えようもない。このような思いを生徒の保護者にさせてしまうことが教育環境にとってよいことなのか、戸惑いを感じています」(和田氏)

 そうしたなかでも和田氏がとくに違和感を抱くのが、新制度下における「大阪府への届け出制」だという。

「新制度案では私立学校の申し出に基づいて、大阪府教育長から指定を受けます。授業料改定は兵庫県への届け出制ですが、大阪府の無償化制度に加入した場合、学校を監督する兵庫県ではなく、大阪府と事前協議しないといけない仕組みになっています。無償化の理念そのものにはもちろん反対しませんが、仕組みそのものが納得できるものではないかたちになっています」

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