日本列島で豪雨災害が相次いでいる。7月上旬には、北部九州を豪雨が襲い、福岡県と大分県と佐賀県で死傷者も出るほどの甚大な被害が出た。現在、佐賀県唐津市に拠点を置くネットニュース編集者・中川淳一郎氏は、この時、山間部に位置する唐津市七山で土砂の撤去作業を手伝う経験をした。中川氏は、「災害の実態は、安全な場所からネットを通じて『風物死』などと面白がっている状況では測れないもの」と振り返る。
* * *
ネット用語に「風物死」というものがあります。「風物詩」にひっかけ、「この月にはコレで亡くなる人がよく報じられる」というものを、面白おかしく取り上げたもの。以下、まとめられたものを貼っておきます。
〈1月=おじいちゃんのどに餅詰まらせる。
2月=雪下ろしの最中に屋根から転落。
3月=免許取り立ての18歳無謀運転。
4月=花見or新歓コンパで急性アル中。
5月=帰省ラッシュの渋滞で玉突き事故。
6月=パチンコで子供蒸し焼き。
7月=DQNの川流れ。
8月=田んぼの様子を見に行って用水路に流される。
9月=バーベキューでカセットコンロ爆発。
10月=毒キノコを知らずに食べる。
11月=山菜取りでクマに遭遇。
12月=軽装で雪山に登って遭難。〉
なかには、注意深く行動していれば避けられたであろうものや、自業自得と言わざるを得ないものもあるでしょう。とはいえ、これらをすべて揶揄の対象にしてしまうのは、当事者たちの気持ちを考えると、切ないものがあります。
この中のひとつ、8月の「田んぼの様子を見に行って用水路に流される。」について、なぜそうなるのか、今回の七山の豪雨で理解できました。田んぼや畑やビニールハウスの様子を見ることは生活に直結するのです。少しでも水の流入を防ぐ方法はあるのか、ビニールハウスのグラグラの支柱を直せるか、など、農作物の被害を最小限に抑える方法を模索するために、見に行くのです。
要するに、「大事な仕事だから田んぼの様子を見に行く」なんですよ。かつて、2000年になる瞬間、コンピュータが誤作動するのではないかという「2000年問題」の時、企業のシステム関連部署の社員は大晦日に会社で待機しましたよね。結局何も起きませんでしたが、これと同じなんです。それが揶揄の対象となることに、理不尽を感じます。