昨今、コロナ禍でテレワークが推奨され、高齢化や空き地問題の解消を目指して地方自治体が補助金を出すことに積極的なことも相まって、移住ブームが再来しつつある。だが、そこには甘くない現実が待っていた。自身は静岡県出身で、10年間の東京生活を経て2007年に八丈島へ移住した漫画家のたかまつやよいさんが明かす。
「八丈島は湿度が高いので、除湿機が不可欠なんです。でも、東京に住んでいる頃は、加湿器は持っていても除湿機って持っていなかったんです。買わなきゃいけないなと思っているうちに、クローゼットの中の高級バッグや洋服がカビだらけになっていた、という話は私だけの体験でなく、八丈島ではよく聞きます。革製品などは一発。
防ぎようがないものといえば、塩害。海沿いをドライブしながら心地よい潮風を感じて、といいたいところですが、車は猛烈な勢いで錆びますから要注意。高級な新車で移住するととんでもないことになりますので、車は錆びてもいいやという気持ちで持ってくるか、島の中古自動車店で購入するのがいいと思います。
島では貨物船で荷物を運ぶので、天候が生活を大きく左右します。低気圧が近づいてくることをうっかり忘れて買い物に出遅れてしまうと、陳列棚に商品が何もないということも。暮らし始めた頃はそんな失敗もありましたが、1年も過ぎる頃には『週末、低気圧がくるから牛乳を買いに行っておこう』という感じで習慣的に身につきました。
困ったのはプリンターのインクが切れてしまったとき。コピー用紙は売っているけれど、インクは売っていない。インクが切れてから注文するのでは遅いんです。
パソコンが故障してしまったときも非常に焦りました。客船は毎日1便往復していますが、貨物船は毎日ではないので、もし、パソコン本体を配達するとなると、メーカーにもよりますが2週間はかかります。仕事上、そんなに待っていられないので、友達に相談してパーツを交換したり、代わりのパソコンを急遽借りてなんとかしましたが、あのときパソコンは家に2台あった方がいいなと切実に思いましたね」
自力でなんとかできる力を培い、事前の下調べをしておく
「自然は振れ幅が大きく、台風や豪雨が来る年も来ない年もあります。突風が吹いて外壁や瓦が飛ぶこともありますから、そんなときに自分でなんとかできる力が必要です」と言うのは、田舎暮らしの諸事情に詳しい一級建築士の中山聡さん。
「万一に備え、電動ドリルや丸鋸で修理ができるような技術や知識も身につけておくべきですね」(中山さん)