見る者を圧倒するような豪邸ばかりが並ぶ都内の高級住宅地。そのなかでもひときわ目を引く邸宅がある。テニスコート20面ほどが入る広大な敷地は、道行く人の視線を拒むように四方が高い塀で囲まれており、中の様子をうかがうことはできない。
「あの家はかつて、ソニーの創業者である故・盛田昭夫さんのお住まいでした。盛田さんのお宅はオープンで、街並みとも調和していましたよ。ところが数年前にここを購入したかたが、高い塀に囲われた要塞のような大豪邸を建てたことで、景観が変わってしまった」(近隣住民)
この建物は、中古車販売大手・ビッグモーターの兼重宏行社長(7月26日付で辞任。71才)が暮らす自宅だ。地上2階、地下1階建ての住居スペースは、中庭にある立派な噴水を取り囲むようにデザインされ、広々としたバルコニー付き。さらにそれとは別に、茶室や緑あふれる日本庭園も備わっている。一部メディアでは、土地と建物で60億円とも報じられた。しかし、その邸宅の主の顔を、近隣住民はほとんど知らなかった。
「たまに見かけるのは、黒塗りの高級車が出入りするところくらい。どんなかたが住んでいるのか、今回の件があるまではまったく知りませんでした……」(前出・近隣住民)
ビッグモーターの保険金不正請求疑惑に対して、ついに国が腰を上げた。国土交通省が7月26日に同社への聴取を実施する。
「問題となっているのは、同社が顧客から預かった車の修理をする際に、車体を叩くなど故意に損傷を作り出し、保険金の水増し請求を繰り返していたことです。昨年3月、警察と損保業界で構成される『損害保険防犯対策協議会』への内部告発によって発覚しました」(全国紙記者)
不正の手口は次々と明らかになっている。車体についた傷が激しく見えるように撮影を工夫するのは序の口。雹によるへこみだと見せかけるために、ゴルフボールを入れた靴下を振り回して車にぶつけたり、自然にパンクしたように見せるために、位置を工夫しながらタイヤに釘を刺すなどの行為が慢性化していた。しかし、こうした事態が明るみに出る前から、ビッグモーターの悪行は知る人ぞ知るものだったという。
「LINEの返事が遅れると『即!』『即!』『即!』」
2016年には産経新聞で、自動車保険代理店でもある同社で、保険販売の目標を達成できなかった店舗の店長から罰金を集め、達成できた店舗の店長に分配するという不適切な罰金制度の存在が報じられた。さらに翌2017年、同じく産経新聞でこの罰金制度が社長の指示で行われたという記事が掲載されたのだ。
「この件がきっかけで、社長の宏行氏が事実上経営の第一線から退きました。そして、2018年に息子で同社の副社長を務める宏一氏(7月26日付で辞任)が会社の主導権を握るようになった。その頃から次第に、保険金の過剰請求が悪化していったといいます」(自動車業界関係者)