顧客の車に故意に傷をつけるなどして保険金を不正に水増し請求していた問題で注目を集めるビッグモーターだが、問題の背景にはその特異な経営体質があったとして批判が過熱している。これまで数々の不正を指摘されながら無視を決め込んできた兼重宏行・社長(71、7月26日付で辞任)は7月25日、ようやく記者会見を開いた。
不正請求問題について一貫して「板金塗装部門単独で、経営陣は知らなかった」と組織的な関与を否定し、不正を働いた従業員を刑事告訴する可能性まで言及。報道陣から「自身を被害者と思っているのか。加害者の一端なのか」と質されると、会見の最後に「刑事告発までする必要はない」と撤回する始末だった。
本来であれば隣にいるべき息子の宏一副社長(35、7月26日付で辞任)は不在で、頻繁な降格人事などを主導してきたとされる宏一氏についての質問も相次いだが、「一生懸命確かにやって、なんとか会社業績を上げようと動いているのはよくわかってました。それが行き過ぎになったのか、結構理詰めで話をしますんで、それがプレッシャーになったんだなと、今となっては感じておりますけれど」と庇ってみせた。
兼重前社長は1976年、出身地である山口県岩国市で「兼重オートセンター」を創業、1980年に「株式会社ビッグモーター」として全国規模に拡大させた。一代で築いた同社は、「売上高7000億円」「従業員数6000名」「全国300店舗以上を展開」、そして「買取台数6年連続日本一」を謳っている。自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏が語る。
「ビッグモーターは1990年代までは山口周辺で事業を展開していましたが、その後九州から四国、関西へと拡げて全国展開を進めます。2005年に大阪を拠点とするハナテンに出資したのを機に各地の中古車販売会社を買収して拡大が加速。今年5月には糸満店がオープンして沖縄にも出店、残るは島根県のみという規模に成長しました。
兼重前社長が経営の手綱を握っていましたが、6年ほど前から息子の宏一氏に経営を任せるようになっていました」