普通自動車運転免許を取得する際、MT(マニュアル)免許かAT(オートマ)限定免許かを選べる。かつてはMT隆盛の時代もあり、「せっかく免許を取るならMTがいい」という風潮もあったが、現在はAT優勢だ。
警視庁の「運転免許統計令和4年版」によると、2022年に普通自動車第一種運転免許を受験した157万8541人のうちAT限定を選択したのは115万7054人で、いまやAT限定が7割超えている。そうしたなか、MT車の免許を取得した人でも、「AT限定でよかったかな」と感じている人は少なくないようだ。教習所を卒業して以来MT車に一度も乗ったことがない人たちに、その事情と本音を聞いてみた。
「馬鹿にされるからMTにしとけ」
IT企業に勤務する40代男性・Aさんは、20年以上前にMT免許を取得したものの、教習所以来MT車に乗ったことがない。
「MTの免許を持っていますが、教習所以降一度も乗っていません。いまの車って、大型車や特殊な車以外、ほとんどAT車ですしね。もうMT車のギアやクラッチ操作なんかは絶対できない。一生乗らない気がします」
免許取得時、Aさん自身はATでもいいと思っていたが、父親や地元の知り合いの“圧力”からMT免許を取得したのだという。
「AT限定のほうが、MTより数万円安いですよね。それでAT限定でいいかなと思ったんですけど、北関東の地元ではとにかく『AT限定はダサい』と言われました。父親も『馬鹿にされるからMTにしとけ』みたいな感じ。
当時、『外車はまだまだMTが多い』とか、『ATは女の子が取るものだ』といったことも言われました。そもそも外車を買えるような年収でもなかったのに(笑)。もちろん、MTのほうが運転できる車の選択肢も多く、運転する楽しさが広がるかもしれませんが、乗る可能性もないのに取る必要はまったくなかったです」(Aさん)