岸田文雄・首相が掲げる「異次元の少子化対策」は子育て世帯の支援が中心だが、一方、日本の出生率低下に歯止めがかからない根本原因として「婚姻数の減少」も指摘されている。出生率を上げるため、適齢期の未婚の男女に向けた経済支援や婚活支援などの必要性を訴える声は多い。今や若者の結婚は、当事者だけでなく、社会的にも祝福すべき慶事とも言える。そうしたなか、交際相手と婚約に至ったものの、「相手の家族との価値観のギャップ」に直面し、結婚が頓挫するケースもあるようだ。フリーライターの吉田みく氏が、ある20代男性のリアルケースをリポートする。
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「多様性」がキーワードの現在、結婚に対する考え方もさまざまだが、なかには旧来の価値観のまま、バージョンアップされていない人たちもいるようだ。
学生時代から交際を続けてきた彼女と、昨年秋に婚約したという神奈川県在住の公務員・ハジメさん(仮名、27歳)。今年は結婚に向けて具体的な準備を進める予定だった。ところが最近、彼女の言動に「ある変化」が生じたという。
「『交際7年目の記念日だから、特別なアクセサリーを買って欲しい!』とカタログを見せられたのですが、そこに載っていたのは50万円を超える高級ブランドのネックレスでした。さらに、その日の食事は『夜景がきれいなレストランでお祝いしたい』と席料5000円、コース料金1万5000円のレストランを提案してきて……。公務員の僕に、そんな贅沢が無理なのはわかっているはずなのに、あえて無茶な要求をしてくるんです」(ハジメさん、以下同)
大学時代に始まった彼女との交際歴は長い。相手の価値観・金銭感覚などは、お互い十分知っているつもりだったが、「結婚を考え始めた昨年あたりから、彼女に異変が起きた」とハジメさんは言う。
「昨年、彼女のご両親に『結婚させてください』と伝えた後から、急に彼女が高額なプレゼントや食事を要求するようになったんです。以前はそのようなことは一切なく、ブランドや見栄えにこだわらない人で、飾らない性格がとても好きだったのですが、今では180度違う。
そう彼女に訴えたら、『だってお母さんが、自分にどれだけ尽くしてくれるか見たほうがいいって言うから。女の子は結婚相手で人生が決まるとも言われてるし……』なんて言うんです。要は、彼女のお母さんが僕のことを試していたんだと気が付きました」