吉田みく「誰にだって言い分があります」

「娘に共働きはさせないで!」 バブル世代の“婚約者の親”から無茶な結婚条件を提示された20代男性が感じる価値観の違い

東京・芝浦のディスコ「ジュリアナ東京」。バブルの終焉後しばらくは“宴”が続いた(時事通信フォト)

東京・芝浦のディスコ「ジュリアナ東京」。バブルの終焉後しばらくは“宴”が続いた(時事通信フォト)

現在、婚約は保留中

 彼女の両親は、昭和から平成にかけての好景気を謳歌した、いわゆる「バブル世代」。ハジメさんから見ても、若い頃からお金に困っていないと感じる暮らしぶりだという。彼女の母親自身、「婚約指輪は200万円近いものを貰った」と自慢していたほどだ。結婚という人生の節目を前にしての彼女の変化は、母親の影響によるところが大きいとハジメさんは見ている。

「僕がリボ払いしてでも高価なものが欲しいのかと彼女に問うと、『いや、本当に欲しいわけじゃなくて、誠意が見たかっただけなの』と……。さすがにうんざりしました。7年も付き合った相手にそんなことをされるとは思わなかった。ショックです」

 問題はほかにもある。それは彼女の母親に示された結婚の条件だった。

「『将来的に子育てが大変になると思うから、結婚後は共働きさせないでほしい』と言われました。まず、子供については彼女と慎重に考えているので口出ししないでほしい。それに、物価高の今、公務員とはいえ共働きでないと生活がカツカツになるのは目に見えています。それだって2人で話し合って決めていきたかったのに……。

 娘を心配する気持ちはわかりますが、話を聞いている間じゅう、昭和の価値観を押し付けられているようで、息苦しくて仕方ありませんでした……」

 向こうの母親の要望に「心底参った」というハジメさん。かといって彼女を責めることはできず、婚約はいったん保留中だ。ただ、時代錯誤の価値観を押し付けてくるような相手と結婚後も親戚付き合いするのは困難に感じており、最悪の場合、婚約を解消することまで検討しているという。

 このところ物価高が続き、株価や不動産価格の上昇が見られる現在ではあるが、一方で収入がなかなか増えず、生活苦に喘ぐ庶民は多い。日本中が好景気に沸いた30年以上前の「昭和・平成バブル」とは状況がまったく違う。そこを理解しないまま娘の結婚に口を出すのは、たとえ「親心」だとしても歓迎されにくいだろう。

【プロフィール】
吉田みく(よしだ・みく)/埼玉県生まれ。大学では貧困や福祉などの社会問題を学び、現在はフリーライターとして人間関係に独自の視点で切り込んでいる。マネーポストWEBにてコラム「誰にだって言い分があります」を連載中。趣味はドライブをしながら道の駅を巡ること。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。