肝心の通帳や保険証券が見つからない
モノの処分がされないまま親が亡くなると、相続手続きにも影響を及ぼすと、明石さんは語る。
「いらないモノ、捨てづらいモノばかり出てきて、肝心の通帳や保険証券、住民税や固定資産税がわかる納税通知書、遺言書など、相続のために必須なものは見つからないのです。結局、遺品整理の業者を呼ぶことになれば、余計なお金がかかります」
預金を相続するには、亡くなった人が持っていた口座はすべて、その金融機関に直接足を運んで手続きする必要があるため、親がどこにいくつ口座を持っていたかわからなければ、なすすべもない。税理士の板倉京さんが語る。
「ネット証券やネット銀行は、パソコンやスマホのパスワードから書き残しておくべきです。また、借金がある場合は必ずその存在を知らせておくこと」
中には、不用品が多すぎることで相続争いになったり、遺族の関係が悪くなったりする事例も。三重県に住むWさん(64才)が打ち明ける。
「亡くなった母も、母方の祖母も、なにかとモノをため込むたちで、実家はいらないモノであふれていました。母の葬儀を終えた後、あまりにもモノが多いから、親族みんなで遺品整理をすることになったんです。
すると叔母が私をにらんで“姉さんは大きなオパールの指輪を持っていたはずなんだけど、知らない? あなたのポケットの中に入ってないかしら”と……。そんな指輪があったことすら知らないし、母を亡くしたばかりの私にそんなことを言うなんて、信じられなくて。よくよく確かめてみたら、その指輪をつけていたのは母ではなく、祖母だったんですよ!
ひどいのは叔母ですが、母や祖母が生前に少しでもモノを減らしておいてくれたり、せめて“形見分けリスト”でもつくっておいてくれれば、こんないやな思いをせずに済んだのに」