生前贈与のルールを正しく理解しておかなければ、自分だけでなく家族にも迷惑をかけることになりかねない──。相続は法定相続人にしかできないが、贈与は誰にでもできる。単純に相続財産を減らしたいだけなら、法定相続人ではない「孫」に生前贈与しておけば相続時の持ち戻しがなく、特別受益にも当たらない。だがそれも、慎重に行う必要がある。
岡山県の女性Yさん(69才)が話す。
「もともと、息子の嫁のことは苦手でしたよ。愛想が悪くて、息子にも高圧的で……でも、相続財産を減らしたかったし、孫はかわいい。だから小学校入学を機に教育資金としてかなりの額を一括贈与したんですが、その直後に息子夫婦が離婚して、親権は嫁が持つことに……結局、あげたお金は孫、というより嫁のものに。何に使っているのか、きちんと孫のためになっているのか、不安でたまりません」
贈与したお金を、受け取った人に正しく使ってもらうためには、目的別の特例を使うのがいい。例えば、受贈者(贈与される人)1人につき1500万円までなら非課税になる教育資金の一括贈与の特例は2026年3月末、受贈者1人につき1000万円までの「結婚・子育て資金の一括贈与」の特例は2025年3月末まで延長され、いずれも即効性のある相続税対策だ。
ただ、手続きが面倒で、使い勝手が悪いという面もある。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが説明する。
「教育資金は、使い残した分には贈与税がかかります。また、結婚・子育て資金は、受贈者が50才を過ぎたときに使い残しがあれば課税される。また、受贈者の年間合計所得が1000万円以上だと非課税になりません」