自動車保険の保険金不正請求疑惑が大きな問題となっている中古車販売大手「ビッグモーター」。国土交通相は同社が店舗前の街路樹を伐採したり除草剤を撒くなどして枯死させたりしていた“街路樹枯死問題”で、損害賠償請求に言及した。背景には、兼重宏一・前副社長らが全国の店舗を視察する「環境整備点検」があったと指摘されている。
ところが、樹木の伐採を巡る騒動は、東京都目黒区の高級住宅街にある兼重宏行・前社長宅の周辺でも起きていたという。
ソニー創業者の一人である盛田昭夫氏が暮らしていた邸宅の跡地に建てられたのが兼重前社長の「20億円豪邸」だ。近隣住民はこう語る。
「あそこがまだ盛田家の邸宅だった頃、敷地内に大きな桜の木があったんです。桜の季節になると、財界のVIPや名だたる著名人の方々を呼んで“桜を見る会”が開かれていました。あの世界的な指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤンさんも訪問されたことがあるお屋敷は、外からも桜を眺めることができたので桜の名所になっていて、近隣住民からも愛されていたんです。他にも高い樹木が茂っていて、鳥が集まり、自然豊かな風情がありましたね」
1999年に盛田昭夫氏が亡くなった際に家族が相続した邸宅は、2016年に兼重前社長の資産管理会社が土地を取得し、2020年に兼重家の豪邸が新築された。
「盛田さんの頃のこともあったので、近隣の方が『できれば桜の木を残してほしい』と兼重さん側にお願いしに行ったようです。ご本人に直接話せたのかはわかりませんが、聞き入れられず、結局、伐採されてしまいました。もちろん兼重さんの土地なのでどうしようが自由なのですが、近隣住民で残念に思っている人は多いんですよ」
かつて盛田邸で咲き誇っていた桜の木の代わりに、兼重邸には「要塞」と呼ばれる高い塀がそびえ立っている。
※週刊ポスト2023年8月18・25日号