週刊ポスト取材班が入手した2枚の写真には、腕を組んだ男性がオフィス内でスーツ姿のスタッフらに向かって何らかの指導をしている姿が写っていた。正面で直立する体格のいい男性スタッフは前で手を組み、真剣に話を聞いているように見える。もう一方の写真からは小柄が男性が、部下を従え車をチェックする様子も伺える。
このスーツ姿の男性らを従える人物──自動車保険の保険金不正請求疑惑が社会問題となっている中古車販売大手「ビッグモーター」の前副社長・兼重宏一氏(35)その人だ。7月25日、父で創業者の兼重宏行・前社長は記者会見に出席して自身の見解を述べたが、本来であれば隣にいるべき宏一氏の姿はそこになかった。
この会見で、同社の経営陣は宏一氏の仕事ぶりについて「一生懸命やって、なんとか会社の業績を上げようと動いているのはよくわかっていました」と擁護の姿勢をみせていたが、ビッグモーターで不正が横行するようになった背景には、過剰なノルマや異常な降格人事があったという。それは宏一氏が実質的に経営を担うようになってからのことだったと指摘する声もある。自動車業界関係者が語る。
「宏一氏は早稲田大学出身で、アメリカでMBAを取得してもいます。確か、公認会計士の資格も持っていたはずです。ビッグモーターは学歴不問のため、宏一氏にしてみれば、全社員が格下に見えたのかもしれません。社員に対する態度は目に余るものだったそうです」
店長経験もある元社員のSさん(54才)も、宏一氏の印象をこう語る。
「ゴルフばかりしていてLINEのアイコンもゴルフをしている自分の写真でしたね。ゴルフでも仕事でも、年上に対しての物言いは横柄で、終始バカにしたような口ぶりでした。言うこともコロコロ変わり、とても好印象と言えるような人ではなかった」
LINEグループでの尋常ではないメッセージ
同社ではLINEが活用されていたが、宏一氏はもっぱらそのLINEを通じて社員とコミュニケーションを取っていた。同社の問題を長く取材してきた自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏は、週刊ポストの取材に対しこう解説していた。