“悪いことをしている自分”に酔いしれる学生
別の私立大学に勤務する女性教員・Bさん(30代)も、ゼミ生などから大麻に関する話題をよく耳にするようになったという。
「私のゼミ生も、飲み会の席で『地元にプッシャー(※薬物の売人)がいる』とか、『マリファナでバッド入っちゃって』とか、あたかも武勇伝のように話している学生がいたので、真面目な顔で注意をしました。そうすると『でも僕が所持しているわけじゃないんで!』と言い返してきて、驚きましたね」(Bさん)
若者のあいだでヒップホップ人気が高まっていることが、大麻の話題をカジュアル化を後押しする要因となっているのではないか、とBさんは懸念する。
「現在、日本でも若年層のラッパーは大麻使用を公言する者が珍しくないです。Instagramなどでは、実際に大麻をペーパーで巻いたジョイントを吸う動画などを配信するラッパーもいます。こうした状況によって、違法行為である『大麻所持』ではなく、『大麻使用』であれば問題がないという認識が広まっているのかもしれない。
とくに、大学デビューのような学生は“悪いことをしている自分”に酔いしれる傾向があり、嘘か本当かは分かりませんが、大麻使用を堂々と教員の前で公言したりするのです。このような状況はやはり問題であると思いますし、今回の日大アメフト部の報道を見ても、『やっぱりそういう時代よね』と納得してしまいました。
寮という閉鎖的な空間と、スポーツというマスキュリンな空間では薬物使用への心理的なハードルが下がりやすいのかもしれない。ひとりが手を出すと『赤信号みんなで渡れば怖くない』という感覚で、部活内で広まっていく可能性だってあると思います」(Bさん)
警視庁も、大麻は「ゲートウェイドラッグ」とも呼ばれており、さらに強い刺激を求めて毒性の強い薬物に手を出すようになる例も多いと、警鐘を鳴らしている。SNSを中心として大麻の情報が蔓延し、学生のあいだでも違法性に対する危機意識が薄弱になっていることに、大学教員たちは危機感を持っているようだ。(了)