男性が“お化け”として働いたのは、客が順路どおりに歩く「ウォーク・スルー型」のお化け屋敷だ。要所にお化けが配置され、客がポイントに差し掛かった瞬間、唸り声をあげて襲いかかる。悲鳴を上げ、腰を抜かす客もいるが、お化け側にも「厳しいマニュアルがある」という。
「お化け役のアクターがいるアトラクションでは、『客に触れることは厳禁』『(客と)1メートルの距離を保つ』『(客が)パニック状態になった場合は無線でコントロールセンターに連絡、直ちに退避路に誘導』といったマニュアルがありました」(同前)
スリルを求める客に応えたくなるのが“お化けアクターの性”だが、これが災いしてトラブルが起こることは珍しくないという。
「やはり、お酒を飲まれて入場する方のトラブルが多い印象です。われわれ“お化け”は挑発、暴言を吐かれたり、小突かれることもあります。とくに、若年の“やんちゃ”そうなカップルや、お子様連れのご家族は警戒しますね。驚かして逆ギレされたり、後からクレームが入ることもあるので、塩梅が難しいです(苦笑)」(同前)
コロナ禍の「非接触」傾向も相まって、人が人を驚かすウォーク・スルー型お化け屋敷は減りつつあるそうだ。だが、日本の現状はまだましな方かもしれない。米国在住ライターはこう言う。
「アメリカにも幾多のお化け屋敷はありますが、実は日本の比でないほど過激で、ちょっとした社会問題になったこともありました。精神的な恐怖で客をとことん追い込むスタイルが受けていて、入場前に誓約書の提出を求める施設も少なくありません。そうした背景もあってか、アメリカでもお客さんが“お化け”役のキャスト、運営者を訴える裁判がいくつも起きています」
どの国でも「お化け」は“生き辛い”世の中になったようだ。(了)