日本では古くから「夏の風物詩」と位置づけられてきた「お化け屋敷」。遊園地やテーマパーク、レジャーランドに欠かせないアトラクションのひとつだが、客を驚かす側の“お化け”たちからは「何かとやりにくい時代になってきた」とぼやき節が漏れてきた。
今年2月、空手有段者が「お化け屋敷」を訴える裁判を起こし話題となった。騒動の舞台は京都の東映太秦映画村。発端となったのは、10年以上前に起きた「ある事件」だった。
2011年、社員旅行で映画村を訪れた当時30代の男性が、飲酒した状態でお化け屋敷に入場。お化け役のキャストに驚かされるとパニック状態に陥り“咄嗟に”蹴りを炸裂、キャストの顎の骨を折るなど重傷を負わせた。男性は空手5段の有段者だった。
その後、男性はキャストに謝罪、治療費などを支払ったとされるが、2015年にキャストが損害賠償を求め提訴。翌2016年に男性が解決金約1000万円を支払うことで和解が成立した。
一件落着に思えたが、今年に入り事態は一変。ケガを負わせた側の男性が、映画村の運営会社である東映京都スタジオを相手に「運営会社は(お化け役)従業員に対し、客との十分な距離の確保など指導を怠った」などとして、550万円の支払いを求める訴訟を起こしたのだ。
お化け側にも「厳しいマニュアル」が存在
裁判の行く末は不透明だが、長年、国内の有名レジャーランドで“お化け役”を演じてきた男性が語る。
「私はアクター(演者)事務所に所属しており、レジャーランドへ出向する形でした。ランドでの勤務はオーディションもあり、選抜されたアクターは研修中、そのお化け屋敷のコンセプトやストーリー、マニュアルを徹底的に叩き込まれます」