別の中堅私立大学で勤務する女性教員・Bさん(40代・法学部准教授)はコロナ禍以降、「ガクチカがない」と悩む学生の相談に乗る機会が増えたと語る。
「2020年以降、コロナ禍によって、理想のキャンパスライフを送れなかった学生がとても多いです。昨年からほぼ全面的に対面授業が再開しましたが、そうするとずっと家でオンライン授業を受けていた学生たちは、ギャップに戸惑ってしまうんです。
私は学生相談の業務を担当しているのですが、『今さらガクチカを求められても、家でオンライン授業を受けていただけなので何もありません』とか、『3年生からでも、ボランティア活動したり、サークルに入ったりした方がよいのでしょうか』と真剣な表情で相談してくる学生が後を絶たない。
『自分の学生生活には力を入れたものがない』とコンプレックスを感じている学生も多く、企業が『ガクチカ』を求める風潮が、就活生に大きなストレスを与えていることを実感します」(Bさん)
Fラン大学の学生「ガクチカをアピールする機会がない」
他方で、“Fラン大学”と呼ばれる大学に勤務する男性教員・Cさん(50代・文学部教授)によれば、Fラン学生ならではの「ガクチカ」に関する悩みがあると話す。
「MARCH(明治・青学・立教・中央・法政)以上の学生であれば、あまり気にする必要はないのかもしれませんが、私の勤務先のような大学の場合、学生たちは『ESでほとんど落とされる』と嘆いています。どんなに学生時代にアルバイトや学外活動で頑張ったとしても、その『ガクチカ』をアピールする機会が圧倒的に少ない。『1年の頃からガクチカ作りのために頑張ってきたのに、結局学歴がすべて』となってしまい、そんな先輩たちの現実を目の当たりにした在学生たちは、やる気を失ってしまう。
そもそも初年度からガクチカを意識させすぎると、自由な学生時代が送れなくなってしまう。学生というのはもっと勉学に励んだり、好きなことに没頭したりする心の余裕が必要なはず。それが今では1年からガクチカを意識し、2年からインターンを始め、3年生では本格的な就活。4年生は卒論を書きながら就職活動を続ける。これでは大学4年間がすべて就活のための時間になってしまうと危惧しています」(Cさん)
アルバイトやサークル、部活、そして学業までもが「ガクチカ」のエピソード作りになってしまう──。入学初年度から就職活動を意識させる大学が増えるなか、「ガクチカ」作りへの圧力が学生たちを苦しめている。そうした風潮に、大学教員からも疑問の声が上がっている。(了)