過去に物件内で自殺や他殺などが発生した、いわゆる「事故物件」は避けたほうがいいのか──。国土交通省が2021年10月に公表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によると、賃貸契約では事案発生から約3年経過すれば告知しなくてもよい。“事故”から3年過ぎれば“事故物件扱い”されなくなるというわけだ。また、自然死・日常生活の中での不慮の死(特殊清掃等が行われた場合は除く)の場合は、原則告げる必要はない。隣接住戸・日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生したものも告知義務は原則ないという。
しかし、告知されようとされまいと、そこで事故(事件)が起こったことは事実。それを気にする人もいれば、しない人もいるのが実情だ。
都内の不動産業者は、「家賃が相場より安い物件というだけで、過去に何かあったんじゃないかと疑って怖がる人はいる」という。また、「他の部屋で事件が起きたという情報を知ったうえで、内見する際、当該部屋の前まで行きたがる人もいた」とも。
前出の不動産業者は「気にしない人がほとんど」だというが、一方で気になって仕方がないという人がいるのも事実。物件選びの際、事故物件かどうか調べる人、調べない人にそれぞれの理由を聞いた。
20代男性「めちゃくちゃ調べる」
IT企業に勤務する20代男性・Aさんは、物件探しの際、過去にその物件で何があったか必ず調べるタイプだ。
「めちゃくちゃ調べます。物件名でネット検索し、事故物件が掲載されているサイトをくまなく見る。同じマンション内で、ほかの部屋よりも家賃が安い場合はかなり疑いますね。他の部屋に比べて異様にリフォームされていないかもチェックします。少しでも疑問に感じたら、不動産業者に『もしかして過去に何かありましたか?』と聞きますよ」(Aさん)
実際、過去に事故があったとわかり、気に入っていた物件をあきらめたこともあった。
「立地や家賃、部屋の間取りは気に入っていたんですが、借りませんでした。たとえ自殺や他殺から時が経っていても、なんとなく怖いというか……。
同じマンション内で、借りたい部屋ではない他の部屋に自殺や他殺があった場合もあって、それは少し迷いました。戸数が多い物件だったので、部屋と部屋の距離が物理的に離れているならいいかなと思ったんです。家賃交渉できる切り札になるかもしれないと思い、言ってみたのですが、期待したほど家賃は下がらず、結局借りるのはやめました」(Aさん)