借りようとしたマンション・アパートの部屋が「事故物件」であった場合、大家はそのことを事前に告知する義務があるという。では、借りようとしている部屋の隣や上下の部屋が事故物件だった場合はどうなのか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
不気味な相談です。あるマンションに引っ越したのですが、夜中に下の部屋から何か突き上げるような音がします。でも、その部屋は空き室で、しかも事故物件。この場合、管理会社に告知の義務はないのですか。引っ越したくても、お金はないですし、せめて家賃の減額に応じてもらえる可能性はありますか。
【回答】
自殺や殺人などの不幸な出来事があった建物でも、清掃やリフォームで事件の痕跡がなくなれば、居住に支障はないはず。とはいえ、普通であれば、そのような建物に住みたくないのが人情で、知られると、多少なりとも価値は下がりますし、賃料も安くなります。これが、いわゆる事故物件です。
こうした「目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景に起因する心理的欠陥」を「建物の心理的瑕疵」といいます。
それなのに大家が賃貸物件に、建物の心理的瑕疵があることを知りながら黙って貸すと、不法行為になる可能性もあります。
賃貸マンションでの賃借した居室部分ではなく、隣接する別の区画で事故が起きた場合に「建物の心理的瑕疵」があるといえるかについては、国交省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が参考になると思います。これは仲介業者向けのガイドラインですが、対象不動産で発生した自然死や日常的不慮による死亡以外の死亡については、告知義務があるとしています。この対象不動産とは、賃貸マンションでいえば、賃貸契約の対象になった当該住戸のこと。なので隣接住戸で、自殺や殺人があっても、告知義務はないことになります。