ライバルの台頭も懸念材料だ。国際技術ジャーナリストの津田建二氏が語る。
「なかでも急成長しているのがカリフォルニア大学バークレー校の教授らが開発したフリーCPUコア『RISC-V』(リスクファイブ)です。高性能と低消費電力が売りで、アームを脅かす存在とされています。アームのCPUシェアが9割といってもスマホにおいての話。デジタル産業はすでに車のコンピュータ開発にシフトし始めており、そこではリスクファイブに優位性がある。アームの牙城もいつかは崩れる」
最大のリスクファクターとなる可能性があるのは孫氏自身だ。関氏が語る。
「ITバブル崩壊後にヤフー株を切り売りし、SVFの大赤字でアリババを手放すなど、孫さんはこれまで何度も投資に失敗し、経営危機を招いています。
彼には100回失敗しても1回大当たりすればいいという博打うちの側面がある。巨額の資金を背景にした投資が大失敗に終わり、アームがヤフーやアリババのように売却される可能性もあります。問題は、今後アームに追い風が吹く保証がないことです。その場合、さすがの孫さんでもソフトバンクGの経営は後継者に譲り、身を引かざるを得なくなるかもしれません」
孫氏の夢は実現するのか、それともつゆと消えてしまうのか──真価を問われる時は迫っている。
※週刊ポスト2023年9月1日号