さらに、今年のジャクソンホール会議のテーマは「世界経済の構造変化」である。景気や物価への影響が中立的な金利水準とされる自然利子率について言及があるかどうかも注目点だ。米国の自然利子率は実は従来考えられていた水準より高いところにあるのではないかという議論が増えてきている。こうしたなか、パウエル議長が、自然利子率が上昇している可能性を示唆した場合には、「金融引き締めの長期化」「利下げ転換はかなり先」といったタカ派なメッセージを市場に伝える可能性があり、注意が必要だ。
ほか、23日には米半導体企業のエヌビディアが決算を発表する。生成AI(人工知能)ブームの火付け役となった同社の決算と株価反応は、足元の相場調整がより本格的なものになるのか、それとも調整が終了し上昇トレンドを再開させるのかを左右する程の大きな影響力を持つと思われる。ただ、同社の株価は高値から多少調整したとはいえ、バリュエーションは前回決算以降に大幅に切り上がっており、投資家の期待を超えて再び高値を更新するハードルはかなり高いと考えられる。
17日、ナスダック指数やS&P500種株価指数に続いて、ダウ平均も遂に50日移動平均線を終値ベースで割り込んだ。日経平均も75日線や13週線を割り込んでいるため、日米ともにトレンドの転換は鮮明だ。マネーフロー(資金の流れ)など相場の基調自体は悪化していると思われ、注意が必要な局面に入ってきている。調整が始まるまでの間、日米ともに先行きについては楽観的な見方が広がり、信用買いなどレバレッジを拡大させてきた経緯もある。このため、マネーフローの変化は簡単には止みそうになさそうだ。米エヌビディアの決算にこうしたトレンドを転換させるだけの力があるかどうかと問われれば、やや注意を要すると考える。
相場は引き続きボラティリティー(変動率)の高い神経質な展開が続きそうだ。こうしたなか、株式ポートフォリオのリスクを最小化するような戦略を用いた「iシェアーズMSCI日本株最小分散ETF(上場投資信託)」に組み入れられている銘柄への投資などが一考に値しよう。足元、中小型グロース(成長)株で必要以上に売られているような銘柄が多く見られるが、日米の長期金利の先高観がくすぶるなか、こうした関連銘柄への押し目買いについては、今はぐっと堪えるべきと考える。
今週は22日に米7月中古住宅販売件数、23日に米8月S&Pグローバル製造業PMI、米7月新築住宅販売件数、米エヌビディア決算、24日に米7月耐久財受注、米カンザスシティー連銀主催ジャクソンホール会議(~26日)、などが予定されている。