テレビ離れが叫ばれるようになって久しい。メディアの多様化とともにエンターテインメントコンテンツの分散化も進み、テレビを見ない人はもはや珍しい存在ではなくなった。それでもかつて、テレビが娯楽の王様だった時代、テレビを見ていない人は少数派で、「テレビを見てない」という言葉が逆に“自慢”と捉えられることさえあった。
だが、いま「テレビ見てない自慢」という言葉は成立するのだろうか。特に、そう指摘された若い世代は、なんのことだか意味がわからず、ポカーンとしてしまうようだ。
「テレビ見てない」何が自慢なのか
不動産会社勤務の20代男性・アオイさんは先日、職場の飲み会で50代の上司からテレビ番組の話題を振られ、見ていないと答えた時のエピソードを明かす。
「上司と先輩がナニかテレビ番組の話をしていた時、たまたま私がそばにいて、上司に『見た?』と話を振られました。『見てないです。というか、テレビはほとんど見ないです』と答えたんです。
その番組に興味がないとか、好き嫌いがあって見ていないのではなく、テレビ全般を見ないので、許してくださいという気持ちでそう言ったんですが、『テレビ見ない自慢かあ~! 昔はよくいたよな、そういうヤツ』と言われました。何が自慢になるのかさっぱりわからず、半笑いでお茶を濁しました」
その後アオイさんは、仲の良い別の40代の先輩に、上司の言葉が意味することを聞いてみた。先輩の意見を踏まえると、次のような意味ではないか、と推測する。
「つまり、テレビを見るのが当たり前だった時代、見ていない人は、変わり者扱いだったのかな、というのが私の解釈です。そのうえで、みんながすることに迎合しない“特別な自分”みたいな意味合いが醸成されて、それが転じて『自慢』と揶揄するような表現になったのでしょうか。意味を聞いても、全然納得できないです。難しいですね」(アオイさん)