住宅ローンを借りている人にとって、繰り上げ返済をするかどうかは、大きな悩みどころだ。繰り上げ返済をする場合としない場合を比較すると、その損得勘定はどうなるか。住宅ローンアナリストの塩澤崇氏が、シミュレーションとともに解説する。
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住宅ローン返済中の方には、「借金を抱えているのは嫌。繰り上げ返済して早く返したい」と考え、貯金に余裕ができたら繰り上げ返済するつもりの方がいるかもしれません。
しかし、この判断はむしろ損する可能性が高いと考えています。住宅ローンは意外とオトクな商品なので、可能限りキープしたほうがよい面もあるのです。
今回は、繰り上げ返済の損得についての考え方を説明していきます。
繰り上げ返済をしない2つのメリット
一般的に、繰り上げ返済には次のようなメリットがあると言われます。
・金利の支払総額を減らせる
・定年退職後の家計が楽になる
・借金から解放されて精神的に楽になる
これらのメリットはたしかにあり、私もこれを否定するつもりはありません。しかし、その一方で「住宅ローンを借り続けるメリット」もあるのです。それは大きく2つあります。
住宅ローンを借り続けるメリットの1つは、「住宅ローンは実質的にリターンがプラスになる」ことです。
借金なのにリターンがプラスになるとはどういうことでしょうか。その内容については後述しますが、背景には今の住宅ローンを取り巻く3つの環境要因があります。それは、【1】税控除(住宅ローン控除)が大きいこと、【2】日銀の金融政策と銀行間の激しい競争により低金利となっていること、【3】団信(団体信用生命保険)の保障内容が充実していること、です。