しかし、彼自身も自分の行為を浮気と認め、娘さんは大変ご立腹とのことですから、ふたりは事実上の夫婦として内縁関係にあったと思います。彼が娘さんに対して貞操を守る義務を負っていたのに、浮気を1年以上継続していたことは、その重大な違反になります。これは娘さんに対する不法行為ですし、さらに彼の不貞行為の結果、内縁関係を解消せざるを得なくなった場合には、内縁関係の破綻そのものも不法行為になります。
そこで、彼は娘さんの精神的苦痛に対して慰謝料を支払う義務があります。不貞行為の慰謝料は、内縁関係の期間、不貞の程度や回数など事案によってさまざまで相場はありませんが、これによって離婚(内縁関係の場合は内縁関係解消)に至った場合は、概ね100万円から300万円の間が多いようです。また、4年間の同棲生活を送る過程で、ふたりで共同して築いた財産があればその分与も請求できます。大抵の場合は、等分に分けることになります。
同棲している住まいが彼の自宅であれば、内縁関係の解消に伴い、引っ越しが必要です。引っ越しを余儀なくされたのは、彼の不貞行為という不法行為の結果です。そして、不法行為をした者は、被害者に発生する損害を賠償する義務がありますから、彼に対し、娘さんの精神的苦痛という損害に対する慰謝料のほか、引っ越し費用という実損害についても請求できます。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2023年9月7日号