結婚している夫婦が離婚する場合、慰謝料などの問題が生じることもあるが、いわゆる「同棲」でもそれは認められるのだろうか? 実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
娘は4年前から彼氏と同棲をしています。そろそろ結婚してほしいと思っていた矢先、彼氏の浮気が発覚。浮気相手とは1年以上続いていたそうで、娘は絶対に許せないそうです。彼氏は浮気を認めて謝罪しています。
そこで伺いたいのですが、結婚していなくても慰謝料や引っ越し費用などを請求できますか。できる場合、慰謝料はどれくらいが相場でしょうか。教えてください。(東京都・アルバイト・57才)
【回答】
男女が、互いに結婚する意思がありながら婚姻届を提出しないまま、夫婦として共同生活を送り、周囲からも夫婦と認められていれば、事実上の夫婦であり内縁関係にあると評価されます。その場合、相続権を除いて、婚姻届を提出した正式な夫婦と同様の法的関係にあると考えられ、互いに相手方に対して夫婦としての権利を取得し義務を負います。
具体的な義務としては、同居して協力し合う義務、貞操を守る義務、婚姻費用の分担義務などで、内縁関係解消の際には財産分与の適用があります。
娘さんの同棲が4年に及び、あなたは正式な結婚を望んでいたとのことですが、仮にご本人の意思が婚姻という束縛を望まず、互いに干渉することなしに自由な生活を望んで同居しているだけなら、長く同棲したからといって、事実上の夫婦として、前記のような評価が認められるかは疑問です。その場合は、相手の男性には娘さんに対する貞操義務がないので、浮気を責めることはできません。