最近ネットニュースで、任天堂の「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」に関する記事を目にする機会が増えた、と感じる人はいないだろうか。この7月15日には発売40周年を迎え、それに関連して多数の記事が登場しているわけだが、元々ファミコンネタは「鉄板」ともいえるほどネットニュースでは人気が高い。なぜ、ファミコン記事は今も多くの人々を惹きつけるのか。1973年生まれの団塊ジュニア世代である、ネットニュース編集者・中川淳一郎氏が考察する。
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40周年だからファミコン記事が増えているようですが、ネットでニュースを読む時代になってからファミコンネタは常に鉄板で、現在の40代中盤~60代中盤ぐらいの人が思い出を5ちゃんねるやYahoo!ニュースのコメント欄などに書き込むのが定番の流れです。
古くは「思い出のファミコン」というサイトが人気を博しました。ファンが各ソフトに対する思い出を投稿し、管理人の深田洋介氏(1975年生まれ)がそれをピックアップして掲載していくサイトでした。
そこには1980年代の少年少女の楽しく、そしてもう戻ってこない思い出が書き込まれていて、後に『ファミコンの思い出』と題して書籍化もされています。1973年生まれの私も、2010年代に深田氏がかかわる別のサイトから取材依頼を受けて“思い出のファミコンソフト”について語り合ったことがあります。ファミコンの話になると同世代とは常に盛り上がります。
特筆すべきは、「荒れる」ことで名高い匿名掲示板・5ちゃんねるでも、ファミコン関連の記事はほぼ荒れないのです。普段は、政治思想やらサッカーvs野球など、何かにつけて対立構造が生まれがちな5ちゃんねるですが、ファミコンが話題になれば一体感が生まれます。そう、ファミコンの話題が出たら、特にオッサン世代は日本が上り調子で、毎日楽しい少年時代を過ごしていた甘美な思い出が蘇り、優しい気持ちになれるのです。
私はこの20年ほど2ちゃんねる、5ちゃんねるのファミコンネタを眺めていますが、毎度毎度、いい意味で進歩することなく「あるある」「お約束」的な書き込みがあります。書き込み者の居住地域は異なれど、ファミコンを通じて全国の少年少女が同じ体験をしていたんだな、と実感させられます。だからファミコン記事は令和の時代になっても人気があるのです。