講演直後の市場反応は?
パウエル議長の講演内容が市場に伝わってくると、株価は一時的に上昇しましたが、その後は下落に転じ、同時に長期金利の上昇とドル高が進みました。
発言内容の中で「さらなる利上げする用意がある」という部分が市場において「ややタカ派的(利上げに肯定的)」と受け取られたようです。ただ、取引終了時刻までに株価はプラス圏へと戻り、長期金利も前日とほぼ同じ水準に戻りました。
パウエル議長の発言はこれまでの方針を継続しており、ある程度想定の範囲内でした。株価が前日と同じ水準に戻ったのは「ジャクソンホール会議」という警戒イベントを通過した安心感の方が強かったからなのではないか、と私は分析しています。
今後の金融政策のポイント
パウエル議長のややタカ派的な発言により、年末までに再び利上げが行われるという予想も多く見られるようになってきました。同時に、年明け早々の利下げへの期待は減少傾向にあり、現在よりも一段高い金利水準をマーケットが織り込んだ形になっています。
そうなると、次なる焦点は9月19日から20日に行われるFOMC会合に集まりそうです。9月のFOMCではドットチャート(FOMC参加メンバーによる金利予想)が最も注目を浴びるでしょう。
2023年内にさらなる追加利上げはあるのか? 2024年に利下げは行われるのか? 利上げや利下げに対する現在の市場予想と乖離があればあるほど、マーケットを大きく動かす要因になります。
まずは次回FOMCでの利上げの有無はもちろん、ドットチャートによる未来の金利予想をみて、金融引き締めからの転換点に向けた予想の変化が、年後半のマーケット動向の重要なヒントになると見ています。
【プロフィール】
森口亮(もりぐち・まこと)/個人投資家、投資系YouTuber。1983年、埼玉県生まれ。元美容師。「Excelで決算数値を管理して、有望な成長株を中・長期的に狙う」という手法で資産を10倍に。その後も着実に資産を増やしている。著書に『1日5分の分析から月13万円を稼ぐExcel株投資』(KADOKAWA)がある。YouTube「毎日チャート分析ちゃんねる」やnote(https://note.com/morip)を日々更新中。