相続が思いもよらない泥沼劇となることがある。父親が亡くなった後、“隠し子”が遺言書を持って家族の前に登場するといったケースだ。『失敗しない相続対策』の著者で吉澤相続事務所代表の吉澤諭氏はこう話す。
「超レアケースですが、ゼロではありません。『亡くなった夫が“隠し子を認知する”という内容の遺言書を残していた』との相談を受けたことがあります。奥さんは隠し子の存在自体は薄々勘づいていたそうですが、遺言で認知するとは知らされていなかったのです」
吉澤氏によれば、婚外子を遺言で認知することは「法的には問題ない」という。しかも、深刻なもめごとに発展する懸念があると吉澤氏が続ける。
「父の遺言書を預けられたのが隠し子で、相続開始後に隠し子が遺言書を持ってくることもある。遺言書に隠し子を含めた遺産配分が指定されていればまだマシなほうで、そこが曖昧なケースもある。これは相続絡みで最大級のピンチといえる状況です」(吉澤氏)
何が起きるのか──。
「隠し子はこんなふうに訴えるんです。『授業参観日も、運動会も一度も父親に来てもらったことがない私が、何不自由なく育てられたあなたたちと同じ法定相続分なんですか』と。もう難航必至です」(吉澤氏)
隠し子が納得しなければ、裁判所での遺産分割調停になっていく。「感情的なしこりが残り、嫌がらせのようにもめ続けることもある」と話す吉澤氏に対策を聞いた。
「隠し子がいる親には正直に言ってもらうしかありません。生きているうちに白状してもらい、遺産の配分もきちんと遺言書に明記してもらうこと。『もう死ぬんだから』と対策を講じないのは無責任です。『相続する人の気持ちを考えて』と伝えましょう」
※週刊ポスト2023年9月15・22日号