暗記力で難関校に入った親が子どもの受験で苦戦
このように、入試で求められることが変化してくると、「中学受験に向いている子」のあり方も変化してくる。先に述べたようにかつては中学受験も暗記でクリアできた。算数も解法を覚えていけば解けたのだ。
しかし、最近は読解力や記述力、論理的な思考力が求められる。特に最難関の中学はその傾向が強い。難関校は受験生の大半は学力が高いので、点数に差をつけるためには、難問を出す必要がある。その難問の質が変化しているのだ。以前は、マニアックな知識で「差を求めた」を求めたが、今はいかに論理的に考えていけるかで差をつけていく。もちろん、知識を覚えることも必要だが、それだけでは通用しなくなっている。
この変化のせいか、かつての暗記力重視の受験で、難関校に合格した人たちの子どもが中学受験で苦戦をするパターンをしばしば見かける。
暗記科目の成績は遺伝の影響が大きいが…
東京大学教育学部附属中等学校は双生児研究で知られる。一卵性双生児はほぼ同じ遺伝子を持っているので、彼らになにかしらの点で差が出ればそれは遺伝子とは違う要素が影響しているということになる。それを調べていくわけだが、一卵性双生児でもっとも成績に差が出るのは数学である。一方で社会や理科はそれほど成績に差が出ない。ただ、理科でも物理は差が出て、生物や化学、地学は差が出にくい。
理科の中で他の3科目は暗記がメインだが、物理はそうではないからだろう。このデータを見ると暗記科目の成績は遺伝の影響が大きいことが分かる。
そのため、かつての中学受験を暗記力でクリアした人たちの子どもが暗記力に秀でていることは高い確率であるだろう。ただ、中学受験の模試でよい偏差値を取れるとしても、親が通っていた難関校に実際に入れるかというとまた違ってくるのだ。
入試で求められるものが変化していることで、苦戦を強いられているのが、“代々慶應”の家系だ。不思議なもので、早稲田出身の人たちは子どもを早稲田系列の小学校や中学に入学させることにそこまで執着しない。一方で、慶應出身者は子どもを慶應に入れようと躍起になるケースが多いようだ。