申請することを知らなければもらえずに損する給付金や補助金がある一方で、「もらえるなら……」となんでも受け取ってしまったことで、まさかの損をすることもある。制度の仕組みを正しく理解しておかないと、その損益分岐点は見えてこない。
たとえば、年金受給対象となる定年後に再就職して働く人も増えているが、失業保険は年金と同時に受け取ることができない。どちらを選ぶべきなのか、「年金博士」としても知られる、社会保険労務士法人ブレイン代表の北村庄吾さんが解説する。
「失業保険の基本手当日額の最高額(60才時点)は7294円なので、月額20万円以上にもなり、年金よりも金額が大きいケースが多い。そのため、一時的に年金が止められるとしても、失業保険を受け取る方が金額的には得になることが多いと言えます」(北村さん・以下同)
ただしパートやアルバイト勤務などで給与がそれほど多くない場合は、基本手当日額も低く、年金の方が多くもらえるケースもあるため、注意が必要だ。
「例えば、月給10万円で6か月働いて60万円を得ているとすると、離職時の年齢が60才以上65才未満の場合、失業保険の基本手当日額は2666円となり、1か月では約8万円になります。自分の年金月額とどちらが多いか比較して選ぶようにしましょう」
定年後の継続雇用で収入が減った場合は「高年齢雇用継続給付」が受けられる。60才以上65才未満の賃金額が60才到達時の75%未満となった場合、下がった賃金の最大15%が受け取れる制度だが、これを受けると年金が最大6%カットされてしまう。ファイナンシャルプランナーで消費生活アドバイザーの丸山晴美さんが説明する。
「老齢厚生年金の額と給与の合計が48万円を超えると、超えた額の2分の1が調整されます。合計48万円以上にならないように工夫が必要です」
もらい方次第で受け取れる額が変わってしまうため、しっかりと制度の仕組みを把握しておきたい。
※女性セブン2023年9月28日号