長年勤めた会社を定年退職した後も、仕事を続ける人が増えている。しかし、「体が動くうちは稼ぎ続けたいし、生きがいにもつながるはず」などと張り切りすぎると痛い目に遭うかもしれない。シニア専門のキャリアコンサルタントを務める金澤美冬氏が指摘する。
「60歳で定年を迎えて新しくアルバイトなどを始めようとする人は、まだまだ元気なため頑張りすぎてしまうケースが多い。シニア世代で始めるバイトはもっと気軽に考えたほうがいいです」
まだまだ現役のつもりで自分の体力ややる気を過信していると、むしろ健康寿命を縮めかねない。
特に会社で真面目に勤め上げた人が失敗に陥りがちだという。
「会社員でデスクワークを中心に仕事をしていた人が、健康のためにと配達員などの肉体労働を急に始めると無理をしがちです。“チラシのポスティングの仕事はいい運動になる”と始めた人で、今夏の昼間の酷暑で熱中症になったり、暑さを避けて夜間に回ったために捻挫して入院したケースがありました。この事例は1枚配布して4円のポスティングだった。時給換算で1000円、月額5万円というノルマを自らに課しており、本人も真面目なために与えられた仕事をこなそうとしたのが仇となりました」(以下、「 」内は金澤氏)
スーパーなどのチラシには定められたセール期間があり、期間内に配布するといった制約があるため、真面目な人ほど落とし穴にはまりがちだという。健康のためにと始めたバイトで怪我をしては元も子もない。
「石の上にも3週間」で十分
一方、得意なスキルを活かして始めたバイトが重荷になり、望ましくない結果になることも。
「サラリーマン時代に趣味で始めた動画編集スキルを活かして他人のYouTube動画などの編集を請け負うことになった人が、うつを発症したケースがあります。趣味だから楽しめた動画編集が、作業として他人の動画を作ることになると途端につまらなくなり、締め切りに間に合わせようと夜中に作業することで睡眠不足になりうつ症状に悩まされているそうです。このケースも真面目に頑張りすぎたことで問題が起きました」