老後の生活費を考える中で、支出を左右する大きな要素となるのが「マイカー」だ。ガソリン高騰や事故のリスクを考え、車を手放し、公共交通機関やカーシェアなどを活用するのが賢い選択──と考えがちだ。しかし、「本当に手放したほうがいい人は一部でしょう」と話すのは自動車評論家の国沢光宏氏。
「加齢により運転ミスが起きやすくなるのは確かです。特に経済的に余裕がないお年寄りが、安全機能が限定的な旧型車に乗り続けるリスクは高い。ただ、そこまで窮迫していなければ、車を手放すデメリットも考えておくべきです」
国沢氏は「自由な移動手段が失われる」ことの問題を強調する。
「車は人生を明るくする条件のひとつです。電車やバスといった公共交通機関だと、立つ時間は長くなるし、暑い、寒い、待機時間があるといったストレスが生じる。そうなるとシニアは出掛けるのが億劫になりがちです。ホームセンターやスーパーなどに行きにくくなり、材料や道具が調達できなくて趣味の時間を失いかねない。近所しか動き回れなくなってしまいます」(国沢氏。以下同)
国沢氏は「事故のリスクが気になる人は最新の安全機能を備えた車に乗る選択肢が有力」とする。
「最新モデルが200万~250万円で手が届くようになっていて、事故を起こすことが難しいほど安全性が高い」
他方、ガソリン代がかからないと注目されるカーシェアには懐疑的だ。
「ブレーキやアクセルの位置、ハンドルの利きなどが違う慣れない車を運転すると操作ミスのリスクが上がる。シニアには勧めません」
安易に流行に乗ればいいわけではないのだ。
※週刊ポスト2023年9月29日号