会社は業務の都合にあわせて、職務内容を決定する権限(配転命令権)を持っている。しかし、配置転換の理由が社内恋愛などプライベートに関係することであっても、問題はないのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
必死に立ち上げたプロジェクトチームから外されました。理由は社内恋愛。でも、2人とも独身で、公私の区別はつけてきたつもり。なのに、不合理な噂話が広まり、上司に呼び出され、配置転換。この処置には納得できません。社内恋愛で不利益が起きた場合でも、労働基準監督署は取り扱ってくれますか。
【回答】
上司に社内恋愛を確認されたのですから、恋愛が噂ではなく事実として、会社はあなたをプロジェクトチームから外したことになります。しかし、恋愛はあくまでも私的なことで、会社は介入できません。従って、単に社内恋愛という理由だけで外したとは思えません。
会社は職種を限定して採用した場合を除き、正社員に対し、業務上の都合により、職務内容を決定する権限(配転命令権)を持っています。その行使は無制限ではなく、業務上必要な範囲を超えて従業員に不利益を与えるような配転は、人事権の濫用になります。
精魂込めたプロジェクトチームへの参画継続は、あなたのキャリアアップの上でも有効と思われ、外されるのは不利益です。それでも会社があなたをチームから外したのは、2人の社内恋愛の継続が、チームの推進の上でマイナスと判断したからだと推測されます。これはチームのメンバーの構成や内容、その作業空間、さらにはあなた方の社内の交際ぶり等に基づいて判断されたはず。その判断の妥当性が問題になりますが、降格や解雇などに比べれば、不利益の程度が軽いことから、会社の裁量の範囲は広いと思います。