9月19日に金融庁は、中古車自動車販売大手・ビッグモーターによる保険金不正請求の問題を受け、同社と損保ジャパンの立ち入り検査に乗り出した。今後、数か月かけて2社のからの聞き取りなどを行なうものとみられている。ビッグモーターは8月に取引先の銀行が借り換えに応じなかったために90億円を返済しているが、立ち入り検査などが続くなかでは、銀行サイドからも引き続き厳しい目線を向けられることになりそうだ。
9月14日には、8月中旬に続き2回目となるビッグモーターと銀行団の会合が開かれ、ビッグモーター側が10月末を目標に支援企業を選定する意向を表明したと報じられている。そうした動きによって、銀行サイドはビッグモーターの事業再生を支える方向に舵を切る可能性があるのだろうか。金融ジャーナリスト・森岡英樹氏は「銀行サイドはまだまだ様子見でしょう」とみる。
「金融庁の立ち入り検査がどうなるかを見ないことには、銀行サイドも動きようがないはずです。保険金の不正な請求があったということで、すでに7月末に金融庁は保険業法に基づく報告徴求命令を出しています。今回、検査に入ってあまりにも悪質という判断になれば、ビッグモーターの損害保険の代理店登録を取り消す行政処分に踏み切る可能性もあります。そうなると再建計画が大きく変わってしまいますから、現状では判断のしようがないでしょう」
ビッグモーターが本社を六本木ヒルズから多摩市に移転させるとの発表があったが、「まだ手持ちの資産がそれなりにあるので、身の丈に合うように処分を進めれば資金繰りは当面、担保できるはず」(森岡氏)という。
同業他社が買収するメリットはあるのか
だが、同社にとっては今後も厳しい状況が続きそうだ。
「10月末までに支援企業の選定を目指す意向ということは、ビッグモーターを買収する企業を見つけるのか、まずは信用補完でどこかと提携を結ぶのか。そうしたいくつかのシナリオがありますが、いずれも望みは薄いと思います。立ち入り検査の結果など、まだわからない部分が大きいので、10月末までというのはあくまで希望的観測に過ぎないでしょう。火中の栗を拾うようなところが現われる見通しは全く立っていません」(森岡氏)