旅館を運営する傍ら旅行ライターとしても活躍する山田静さんは、人生経験を積んだシニア女性こそ旅行に行くべきだと推す。
「旅行はつまるところ“強力で強制的な気分転換”。これまで育児や介護などを担ってきた女性こそ、自分の体力や興味をよく知っており、豊富な人生経験を生かした旅行計画ができます。実際に、旅をしているシニア女性は皆さん穏やかで楽しそうで、上機嫌ないい顔をしていますよ」(山田さん・以下同)
いまから12年ほど前は東京でツアー旅行の添乗員もしていた山田さんは、添乗員の仕事で訪れた奈良・吉野山で、印象的な女性を目にした。つい先ほどまで明るく笑っていた中高年の女性客が、満開の桜の前で涙していたのだ。
「ちょうど東日本大震災の直後で、そのかたはお知り合いが被災されたのだそうです。ずっと気分がふさいでいたけれど、そんな時期だからこそ元気が出るようにと友人に誘われ、ツアーに参加したとのことでした。あの日の吉野山の桜は本当にきれいで、それを見ながら立ったまま、無言で涙されていました。人生にいろいろな思いを抱える中高年だからこそ、旅行先でのちょっとしたことが心に響くのだと実感した出来事です」
旅に出ることで、疲れて傷ついた心を癒すことができる。「旅行なんてしている場合じゃない」「旅なんて行ける気分じゃない」──。そんなときにこそ、旅が必要なのかもしれない。
※女性セブン2023年10月5日号