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精神科医が教える「記憶に定着させる」読書術 カギとなるのは「アウトプット」と「脳内物質」

 1つ目の「何度も利用される情報」というのは、先ほどのように「1週間に3回アウトプットされる」情報を指します。人間の脳には、膨大な情報が流れ込みますが、それらは脳の「海馬」という部分に仮保存されます。

 あなたの昨日の出来事を朝から思い出してください。時間単位でかなり詳しく説明できるはずです。では、今から1ヶ月前の月曜日の出来事を朝から順番に思い出してください。予定表を見ればその日の主な出来事は思い出せるでしょうが、その日の朝、昼、夜の食事内容を言うだけでもかなり大変です。人間は、1ヶ月もすると、その体験の詳細を忘れてしまうものなのです。

 海馬は、入力された情報を1~2週間だけ、仮保存します。そして、その「仮保存」期間中に、二度、三度と引き出された情報には、これは「重要な情報である」という付箋をつけるのです。「重要」という付箋のついた情報は、「記憶の金庫」ともいうべき、側頭葉に移動されます。一度、側頭葉に入ると、「忘れづらい記憶」となって長期保存されるのです。

 海馬が「短期間の記憶」を担い、側頭葉が「長期間の記憶」を担います。本を読み、そこで得られた情報を側頭葉の「記憶の金庫」に上手に移動できれば、「読んだら10年忘れない記憶」になるのです。

4つのアウトプットで記憶に残す~「アウトプット読書術」

 本を読んで「1週間に3回アウトプットする」と記憶に残る。これが脳科学に裏付けられた記憶の法則です。

 では、具体的にどんな「アウトプット」をすればいいのでしょうか? 読書に関連して私が行っているアウトプットは、以下の4つです。

【1】本を読みながら、メモをとる、マーカーでラインを引く。
【2】本の内容を人に話す。本を人に勧める。
【3】本の感想や気づき、名言をTwitterでシェアする。
【4】Twitterやブログに書評、レビューを書く。

 これらの4つのアウトプットのうち、1週間以内に3つ行えば、やらないときと比べて圧倒的に記憶に残ります。

 実際に、書評記事を書いて紹介した本に関しては、本を読んでから5年、10年が経過しても、本のかなり詳細な部分まで記憶しています。

心が動くと記憶に残る~「脳内物質読書術」

 私たちは日常的に起きる平凡な出来事のほとんどを忘れてしまいますが、「何度も利用される情報」と「心が動いた出来事」は忘れにくいと言いました。

「心が動いた出来事」とは、喜怒哀楽など激しい情動の変化がともなう出来事のこと。

 物凄く楽しかったはじめての海外旅行、胸が躍るはじめてのデート、何年も一緒に暮らしたペットが亡くなったときの悲しさ、交通事故にあったその瞬間。こうした激しい情動の変化がともなう出来事は、10年たっても、20年たっても忘れることはありません。

「復習」も「アウトプット」もしていないのに、情動がともなう出来事が強烈に記憶されるのはどうしてでしょう? それは、喜怒哀楽にともなって、記憶力を増強する脳内物質が大量に分泌されるからです。

 科学的なデータによって記憶力のアップが確認されている脳内物質には、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、エンドルフィン、オキシトシンなどがあります。

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